大判例

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東京高等裁判所 昭和38年(ラ)152号 決定

本件抗告の趣旨は「原決定を取消し、抗告人の氏清水を佐藤に変更することを許可する。」旨の裁判を求めるというもので、その理由の要旨は「抗告人は昭和二七年頃父の死亡後、その内妻佐藤ハナに引取られて生活していた関係上、近隣、勤務先、友人間では佐藤という姓で知られてきたので、一切の生活関係は佐藤でないと都合が悪いことになり、清水姓では相手にしてくれる人もなく、婚姻も望み薄である。また運勢、健康の点からも佐藤の方がよく、清水という姓も父の代だけで、それ以前は加藤の姓であつた。抗告人の幸福のために氏の変更を許可されたい。」というにある。

抗告人は、改氏の理由としてまず佐藤姓を長年使用していることをあげているが、戸籍上の氏と異なる氏の長年使用を理由に氏の変更を許されるには、仮の氏が長期間にわたり社会生活全般において使用されたため、その氏が戸籍上の氏のように扱われ、戸籍上の氏を使用するとかえつて別人と間違えられて、本人が困るばかりでなく、その人をめぐる社会にも混乱を生ずるような場合で、かつその仮の氏を使用するについて合理的な理由があることを要する。もし氏の変更を軽々しく許すときは、人の同一性を害し、時には債務を免れたり、前科を隠すために悪用されたりする結果ともなるからである。ところで、記録を調査しても、抗告人が佐藤姓を使用するようになつたことにつき、合理的な理由は見当らない。記録によれば抗告人は、亡父の内妻佐藤ハナと同居するようになつてから佐藤姓を用いたというが、当時二五才でそれ以前から戸籍上の氏清水姓で勤めていたのであるから、特に佐藤姓を使用すべき理由もなさそうである。また現に運転手として勤めているが、運転免許証は戸籍面の清水の氏で今日に至つているのであるから、清水姓を用いたとしても、社会的混乱を招来すべき事情も認められない。それゆえ、右の主張は理由がない。

(千種 渡辺一 太田)

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